抵抗負荷二段差動アンプ+フォロア型パワーアンプのシミュレーション
はじめに
抵抗負荷二段差動アンプに出力段を繋いだ型のアンプがあります。
初期の金田式なんかがこれです。
(※これは初期金田式に忠実な回路ではなく、私が適当に書いた回路です。ご了承ください)
一見すると回路規模は小さいのですが、さにあらず。この回路で性能を出すためには、高電圧(正負50V以上)かつ安定化された電圧増幅段電源が要求されます。たいていの今どきのアンプは整流して平滑しただけの電源で動きますから、回路規模的には電源が複雑な分だけ不利です。
また、これは当然ながら自由な電源電圧で動作させることは不可能で、基本的には電源とセットで回路を作ることになります。
そんな訳で廃れた回路なのですが、あえてこれをシミュレーションとしてみようという試みです。
スポンサーリンク
シミュレーション
シミュレーションでアンプの性質を調べるには、
- AC解析によるオープンループゲインの観測
- 過渡解析+FFTによる歪のスペクトルの解析
をやれば概ね足りる、ということを最近は思っています。
ということで、まずはAC解析でオープンループ特性を見ます。
低域ゲイン70dBはオーディオアンプとしては最低限という数字です。高域側については、クローズドゲインを低めに設定している(2倍)のできつめの位相補償が必要になり、ユニティゲイン周波数は2.2MHz程度という結果になっています。とはいえ、第二ポールの位置を見る限りだと、どちらにせよ平凡な高周波特性であることは確かです。
次に約1Wを出力した際のFFT解析結果です。アイドリング電流は0.7A程度です。
優秀といえば優秀だし、平凡といえば平凡。コメントに困る特性です。-100dB以下なら良いんじゃないの? と見る向きもあると思いますが、実機だとたぶんここまで良くはならないことに注意。
要するにこれは普通のアンプだと思って良いようです。ちゃんと作れば今でも通用する性能と音質が得られるでしょう(本当かいな)。
これだけだと面白くないので、入力をアースに落とし、電源に1kHz正弦波(実効値1V)を重複してみます。
オープンループゲインと帰還量からある程度は予想できましたが、電源変動は負帰還で抑圧されて、ざっと1/1000になって出力に現れます。どの程度抑圧されるかは帯域による訳ですが、最大でも70dBのゲインしかありませんし、ゲインが1kHzで60dB程度とすると10kHzでは40dB。
電源のリプル、ノイズとクロストークには十分な対策を取る必要がありそうです。
まとめ
二段目をカレントミラー合成すれば、100dB以上の低域ゲインと電源電圧変動に対するロバスト性を手に入れられる訳で、あえてこの回路を使う理由はないと思いますが……。
バランス出力が得られることを利用して、BTLや完全差動アンプ的に活用するのはありかもしれません。