スピーカーのf0共振と逆起電力
スピーカーのf0共振と逆起電力の効果を確認するため、スピーカーのインピーダンス特性を模した回路でシミュレーションを行います。
定数はこちらからお借りしました。
流れる電流はこうなります。
f0は50Hzくらいです。ここで流れる電流が小さくなるので、駆動力が要らなくなるのかな? と誤解する人もいると思いますが、それは間違いです。
共振の力で逆起電力が生じた結果、駆動電流を相殺するので見かけ上は電流が流れなくなります。信号が止まったときを考えると、スピーカーは共振していますから当然動き続けようとします。それを吸収するために、高いダンピングファクターが求められます。
ということをシミュレーションで見ます。そのためにはf0付近の信号を4波入れます。
電圧信号が0になったあと、電流が気持ち悪く跳ね返っていることがよくわかります。これを完全に吸収してあげればブレーキがかかり、共振は比較的速やかに収束します。吸収しないと揺れ動いたままです。
以上は有名な話です。確認のため、電流駆動も試してみます。
ひどいなーというのが率直な感想。これが目立たなくなるのには0.5秒くらいかかります。エコーたっぷりで、臨場感が増すかもしれません。
準コンプリメンタリー出力段
はじめに
同極性SEPPといえば準コンです。好き好んで使う人もあまりいないと思いますが、将来コンプリパワー素子が入手できなくなることを危惧して、今のうちに使い物になるかどうかチェックしておきます。
シミュレーション
こんな回路です。
アイドリングは1A。流儀はいろいろあると思いますが、今回はインバーテッドダーリントンでゲインを稼いでいません。なので対称性の高い動作(ただし性能は低い。事実上ダーリントンと同じ)になっているはずです。
500MHzくらいで良からぬことが起きている気もしますが、深追いしません。
対称性はまあ合格です。コンプリSEPPでもこれより悪いのはざらにあります。
約1Wで歪みを見ます。
意外というか、コンプリSEPPよりあきらかに偶数次歪みを抑制できています。準コン悪くないですね。
AB級動作でカットオフしたときのFFT(最大値16V(交流電圧とは異なります)入力・4Ω負荷)。
こちらもちゃんと偶数次歪みを抑圧しています。
まとめ
意外ですが、好き好んで使ってもいいのでは? というくらいの好結果を残しました。コンプリに起因する非対称性をある程度軽減できます。
あとは将来に渡ってコンプリのドライバがあるかどうかですね。こちらはこちらで楽観できないのですが・・・
金田式完全対称アンプのシミュレーション(雰囲気だけ)
はじめに
今更感が強すぎますが、金田式完全対称を見ます。同極性PPの実力を確認したいからです。
素子と定数は勝手に決めるので、金田式に準拠はしていません。
シミュレーション
こんな回路。
定数は私の流儀で決めているので、金田式ではありません。終段のアイドリングはこの定数で1Aになります。
無補償でも過渡解析では発振しなかったのですが、かなりやばい状況。
がっつり初段ステップ補償します。
適当に選んだ定数でしたが、一発でほぼ完璧になりました。当たり前ですが、初段の負荷抵抗が小さいときは重たいステップ補償が必要になります。
さて、こうして見ると一応DCゲインは80dBほどあり、思いの外高ゲインです。
いつもの1kHz・約1W出力時のFFTです。特性は普通ですね。とりたてて良くも悪くもないという感想。
主信号が9dB、2kHzが-106dB、3kHzが-112dBです。当たり前ですがシミュレーションなので実機より良くでているはずです。
考察
この回路の厄介なところは、各段がそれなりに重い負荷をぶら下げられている上に局所帰還もまったくかからないので、ある意味素子の素の実力が性能の上限を規定してしまうことです。また、上の方で位相回転する要素が多いので、NFBもがっつりはかけられません。
要するに改良の余地があまりないのですが、まあ別にいいかな? でも同極性PPで高性能なアンプを作ろうとするとこの回路は微妙です。
あとは各部の電流を見て対称性をチェックしておきます。
うーん、コメントに困るというか。可聴域はギリギリセーフと言えなくもありません。厳し目に言えば、初段と終段は非対称です。二段目の対称性は高いです。
まとめ
素性はわかりました。たぶん普通のアンプだと思います。
コンプリSEPPの方が性能は出しやすいのですが、同極性素子しかない状況だとこれしかない・・・のかなぁ。
スーパーフィードフォワード実践編(ただしシミュレーション)
はじめに
スーパーフィードフォワードの実践的なシミュレーションの仕方がやっとわかったので、書きます。
過去の記事
www.audio-simulation.net
www.audio-simulation.net
www.audio-simulation.net
方法と結果
まず次のような回路を用意します。
これがスーパーフィードフォワードのトポロジーですが、定数はちゃんと合わせていません。補正アンプは接続しないでおきます。出力段のアイドリング電流は2mAほどで、純B級動作といっていいと思います。
この段階で歪みを評価しておきます。
意外と低歪み。まあ強い負帰還がかかっているからです。
さて、以前の記事でも示しましたが、スーパーフィードフォワード動作のためにはの条件を満たす必要があります。この回路において、LTSpiceでは、
# A1 (V(bi1)/(V(ip)-V(im))) # Z (V(bo1)-V(o))/I(RZ) # gm (-I(R5)/V(bi1))
と書けます。これらをAC解析で見てみます。
なので、これらをすべて乗じた結果を見ます。
(V(bi1)/(V(ip)-V(im))) *(-I(R5)/V(bi1)) *(V(bo1)-V(o))/I(RZ) *0.25
だめだめですね。あとは辻褄の合うようにパラメータを調整していきます。すると、最終的には以下のような回路に落ち着きます。
カットオフ周波数をもう少し厳密に合わせると綺麗に一本になると思いますが、面倒なので妥協します。どうせ実機でも厳密な第一ポールの位置なんてわからないんだし、気にしても仕方ありません。
少なくとも1kHzでは極めて高精度でスーパーフィードフォワード動作していると言えるでしょう。
ここまでできたら、結線してシミュレーションします。
1MΩと1.565kΩを切り替えて、スーパーフィードフォワード動作させたときとさせなかったときについて検証します。
幅広い周波数で20~30dBの改善が得られており、成功していると思います。
まとめ
やり方はわかったので、これで設計できるし、なんなら実機も作れると思います。ただ、スペアナがないと調整は厳しいと思います。
おまけ
アイドリングを1Aまで増やしたときの結果。
超絶低歪みになりました。ふと思ったのは、引き算ではなくて逆関数で補正信号を取り出すので、補正系の精度に対する要求が小さい? ということ。
また、補正アンプの電流振幅も要求されません。いい性質だと思います。
スーパーソースフォロアSEPPのB級動作
スーパーソースフォロアSEPPの場合、B級動作させようとすると定電流が気絶したりしてとても面倒くさいことになります。
アイドリングは10mA
出力と上下のゲートを見ていますが、明らかにやばそう。
とても高い周波数までずっと高調波が出ています。これは使えないと思います。
A級で使った方が良いです。
スーパーソースフォロアSEPPのバイアス(改良版)
はじめに
以前検討した方法は上下のパワー素子のゲートを電圧源でつなぐという扱いづらいものでした。「別にそんなことしなくても、単に上下独立で電流帰還すればできるんじゃね」と思ってやってみたところできました。
回路とシミュレーション
このような回路です。
0.1Ωの上側に入力側素子のソースが繋がっているのがミソです。これによって出力インピーダンスは0.05Ω+アルファ(深い帰還でも残る素のgm残存分)になります。
まずはAC特性を見ます。
位相余裕が許す限りは帰還をかけて広帯域にできます。アイドリング1Aで帯域を伸ばしてみました。
-3dBポイントは25.5MHzくらいです。嘘くさいけど(ドライブインピーダンスが高くなると初段ポールが効いてくるはずだし、それをなんとかしてもスルーレートの限界が・・・)。
まあ、十分帰還ループに入れられる特性でしょう。
1kHzで約1W出したときのFFT。
なにこれ? へたな二段増幅+バッファ構成とかより低歪みです。信じがたいですが、シミュレーションではそう出ています。
結論
これでいい。
電流デュプリケーター
カレントミラーを向かい合わせにしたような回路を使うと、あるノードに流れる電流を損なわずに他のノードに移し替えることができます。移し替えるといってもあくまでも低周波の話です。
この程度の精度。ウィルソン型カレントミラー風の回路にすればもう少しよくなると思います。
1MHzあたりまでは一応大丈夫。