オーディオアンプとシミュレーション

主にLTSpiceを使ったオーディオのシミュレーションについて書きます。



シンプルな二段差動オペアンプの部品点数の検討

二段差動でシンプルに書くとこんな回路になります。二段差動 シミュレーションは面白くない結果になるので省略。ちゃんと動きます。 差動→シングルと部品点数を比べてみます。差動→シングル回路 一応同じような設計ポリシーなので、同等に比較できると仮定し…

シンプルなディスクリートオペアンプ

ディスクリートオペアンプを組もうとする場合、素子を増やしすぎると配線が地獄なので、できるだけシンプルな回路にしようと考えます。 となると、こんなのが候補にあがってきます。回路1回路2 回路1はシンプルですが、オフセットとドリフトに悩まされそうで…

006P一発のディスクリートヘッドホンアンプ

006P一発だと正負4.5Vで動かすことになるので、意外ときつい制約が生じます。というか、普通の回路だと電圧が足りなくて無理です。 そういう意味ではバイポーラの電流帰還などが振幅が取れて無難ですし、オペアンプを使えばNFBの力でなんとかしてくれるとい…

低電圧ヘッドホンアンプのための電圧増幅段ブートストラップ

はじめに 006P一発とかのアンプを組もうとすると、せめて電圧増幅段の電源がもう少し高ければ出力がだいぶ増やせるのだが、というケースがあります。 一番簡単な方法として、ブートストラップでできますが、必ずしもおすすめはできません。 シミュレーション…

私見バイポーラオペアンプ聴き比べ(NJM4580DD, NJM4556AD, NJM2114DD, NJM5532DD)

はじめに 新日本無線のバイポーラオペアンプは安く買えて音もいいので、庶民の味方です。ただしMUSESとかは除きます。 ということで、手持ちのオペアンプで聴き比べをやってみました。といっても四種類だけですが。 NJM4580DD NJM4556AD NJM2114DD NJM5532DD…

半導体版・全段差動プッシュプルの原理

概要 全段差動PPを半導体で作るとしたら? というテーマをずっと考えていたのですが、MOS-FETのSRPPによって道が開けました。www.audio-simulation.net 回路 こんなのです。回路 なんじゃこりゃと思った人もいるかもしれませんが、シンプルな回路です。初段…

MOS-FET SRPPの基礎研究

A級アンプの出力段に使えるかもしれないと思い、MOS-FETのSRPPについて調べてみることにしました。回路1 原理図に近い回路です。バイアスはかなり簡略化しています。上側は実際には能動素子のフォロアなどを使って作るか、キャパシタで上げることになります…

二段差動で限界までゲインを搾り取る

概要 通常の二段差動回路は初段が抵抗負荷なので、初段カレントミラー負荷の構成と比べると直流ゲインで劣ります。 初段を定電流負荷にすれば、限界までゲインを絞れます。ただし、単純に定電流負荷にしても電位が安定しないので、直流帰還が必要です。これ…

ZDR・D-NFBのわかりやすい解説

はじめに ZDRやD-NFBは怪しい技術だとずっと思っていましたが、ごく単純であることを悟りました。そこで説明を書きます。 簡単なモデル 単純のために0dBアンプを考えます。信号源、理想バッファ、何らかの回路と負荷があるとします。何らかの回路が補正した…

MOS-FET準コンプリ出力段の対称性

はじめに 準コンプリ出力段は対称性が悪いと言われて久しいですが、MOS-FETでちゃんと設計したものはかなり良好な対称性を発揮します。これは以前の記事でも触れました。www.audio-simulation.net せっかくなのでもう少し追求してみます。 おさらい 以前との…

出力段パスコンの存在意義

電源にインダクタのある回路を書いてみます。電源にインダクタAC特性 やばい。なにが起きているのか? たぶん素子の帰還容量あたりとLC直列共振して手のつけられないことになっています。 パスコンを入れて対策します。パスコン挿入AC特性 ちょっと共振っぽ…

自作アンプのアース配線の考え方【ステレオアンプ編】

はじめに 前回の記事では基本的なアース配線の考え方について説明しました。www.audio-simulation.net そこで、今回はもう少し実践的な例として、電源を共有するステレオアンプのアース配線について書こうと思います。ステレオアンプのアース配線は妥協が必…

自作アンプのアース配線の考え方【基本編】

はじめに アンプを自作する上で避けては通れないトピックに、アース配線があります。 たいていは極端に変なことをしなければ(ループとか)適当に太めの線で繋げば音はまともに出ますし、アース配線の良し悪しで音質が変わる……なんてことも正直感知できるほ…

低域ブースト電流正帰還

こういう回路について考えます。低域ブースト電流正帰還 ぱっと見では負帰還側をいじった電流正帰還回路。負帰還側はバスブーストです。AC特性 最終ゲインでもたしかにバスブーストされます。しかし、これだけでは面白くありません。 注入法で出力インピーダ…

スピーカーのf0共振と逆起電力

スピーカーのf0共振と逆起電力の効果を確認するため、スピーカーのインピーダンス特性を模した回路でシミュレーションを行います。シミュレーション回路 定数はこちらからお借りしました。電流正帰還 電池式完全対称型パワーアンプ 流れる電流はこうなります…

準コンプリメンタリー出力段

はじめに 同極性SEPPといえば準コンです。好き好んで使う人もあまりいないと思いますが、将来コンプリパワー素子が入手できなくなることを危惧して、今のうちに使い物になるかどうかチェックしておきます。 シミュレーション こんな回路です。シミュレーショ…

金田式完全対称アンプのシミュレーション(雰囲気だけ)

はじめに 今更感が強すぎますが、金田式完全対称を見ます。同極性PPの実力を確認したいからです。 素子と定数は勝手に決めるので、金田式に準拠はしていません。 シミュレーション こんな回路。金田式完全対称風回路 定数は私の流儀で決めているので、金田式…

スーパーフィードフォワード実践編(ただしシミュレーション)

はじめに スーパーフィードフォワードの実践的なシミュレーションの仕方がやっとわかったので、書きます。 過去の記事 www.audio-simulation.net www.audio-simulation.net www.audio-simulation.net 方法と結果 まず次のような回路を用意します。基本回路 …

スーパーソースフォロアSEPPのB級動作

スーパーソースフォロアSEPPの場合、B級動作させようとすると定電流が気絶したりしてとても面倒くさいことになります。シミュレーション回路 アイドリングは10mA電圧波形 出力と上下のゲートを見ていますが、明らかにやばそう。出力FFT とても高い周波数ま…

スーパーソースフォロアSEPPのバイアス(改良版)

はじめに 以前検討した方法は上下のパワー素子のゲートを電圧源でつなぐという扱いづらいものでした。「別にそんなことしなくても、単に上下独立で電流帰還すればできるんじゃね」と思ってやってみたところできました。www.audio-simulation.net 回路とシミ…

電流デュプリケーター

カレントミラーを向かい合わせにしたような回路を使うと、あるノードに流れる電流を損なわずに他のノードに移し替えることができます。移し替えるといってもあくまでも低周波の話です。電流デュプリケーター電流波形 この程度の精度。ウィルソン型カレントミ…

電流スプリッター

電流を均等に分けたり、好きな比率で分割したりする回路です。カレントミラーのエミッタから流し込むとそうなります。概要波形 多連出力も可能。3分割型電流波形 比率を変えたい場合はエミッタ抵抗をいじります。この場合歪みは悪化すると思います。比率を変…

AB級パラレルSEPP出力段のずらしバイアス

はじめに AB級でパラレルSEPP出力段の場合、すべての素子を同じバイアスに設定するより、バイアスをずらした方が好結果を生む可能性があります。 シミュレーション こんなやつです。シミュレーション回路 上側ドレイン電流を見ます。上側ドレイン電流 電源か…

オペアンプ初段と二段目の出力インピーダンス

はじめに コンベンショナルなオペアンプ増幅回路の内部の電圧増幅段の出力端子のインピーダンスが気になったので調べました。 たとえばこのようなパワーアンプを考えます。コンベンショナルな回路 方法と結果 そのままではNFBがかかっているので、うまく調べ…

無負荷の歪み

通常のオーディオアンプでは出力段の歪みが主な歪みの要因になると言われていますが、歪みが出力段に起因するかどうかは無負荷時と負荷時を比べれば容易に判断できます。 無負荷で歪みが生じていたら、それは電圧増幅段に起因するので、出力段は無関係という…

ベース電流ドライブアンプ

概要 以前から気になっていたベース電流ドライブアンプについてシミュレーションしてみます。 私の発案ではありません。 出典:http://www.geocities.jp/mutsu562000/hp008.htm シミュレーション このような回路です。シミュレーション回路 とりあえずAC特性…

カレントミラーで進相補償

はじめに 電流帰還のかかったカレントミラーでは位相を進めゲインを高めるゼロを作ることができます。 シミュレーションで検証してみます。 シミュレーション こんな感じです。シミュレーション回路 右の回路の100pFと50Ωでゼロを作ります。50Ωは必須ではあ…

高性能カレントミラー

はじめに カレントミラーの性能に疑問があったのでシミュレーションしました。 普通のカレントミラー(ワイドラー型)とウィルソン型 ウィルソン型は帰還がかかるので有利です。シミュレーション1 AC特性。AC特性1 歪み特性。FFT1 こうしてみるとウィルソン…

反転型対アース出力負性出力インピーダンスアンプ

概要 前回の記事で「反転型だと入力インピーダンスが負にならないので、その方が良いかも」と書いたので、反転型についても利得を計算しておきます。www.audio-simulation.net 計算 回路はこうです。原理図 前回、抵抗比をいちいち入力するのが面倒くさかっ…

オペアンプ1つで対アース出力の電流正帰還(負性インピーダンス)回路

はじめに 電流正帰還アンプは出力インピーダンスの負性インピーダンス化によってMFBを実現する方法ですが、既存の回路だと対アース出力にならない(電流検出抵抗が負荷・アース間に入る)ので何かと扱いづらい面がありました。 電流検出抵抗の両端電位をオペ…