オーディオアンプとシミュレーション

主にLTSpiceを使ったオーディオのシミュレーションについて書きます。



カレントミラーで進相補償

はじめに

 電流帰還のかかったカレントミラーでは位相を進めゲインを高めるゼロを作ることができます。

 シミュレーションで検証してみます。

シミュレーション

 こんな感じです。

シミュレーション回路
シミュレーション回路

 右の回路の100pFと50Ωでゼロを作ります。50Ωは必須ではありませんが、入れた方が間違いがないと思います(超高周波では無効化しないと逆に位相が遅れまくる。まあ無視しても良いんですが・・・)。

AC特性
AC特性

 当たり前ですが100pFを大きくすれば低域側に持っていけます。うまくやれば、2stポールをキャンセルするのに使えます。もう少しだけ位相余裕が稼ぎたいというとき向いています。ただし、これで稼げるのは20度がいいところです。

 一見良さげですが、電流帰還を殺すので出力インピーダンスに影響があるかもしれません。ということで入力を電流源として電圧源で振ってみます。

出力インピーダンス測定回路
出力インピーダンス測定回路

出力インピーダンス
出力インピーダンス

 確かに出力インピーダンスは若干下がりますが、これくらいなら許容範囲。むしろカレントミラーにぶら下がる負荷を低インピーダンスで駆動できる分、ここで生じるポールをある程度キャンセルする効果があるかもしれません(!?)。

まとめ

 これは使える方法なので、電流帰還のかかったカレントミラーを見かけたら手軽に100pF+50Ωくらいを突っ込んでおくと何も失わずに位相余裕が稼げます。

余談

 4558族の等価回路にはこれと反対側にCが入っています。

これはNJM4580の等価回路
これはNJM4580の等価回路

 ここに入れるとポールができて損なはずなんですが・・・

 データシートの間違いかな? とも思ったのですが、オリジナルのRC4558Pの等価回路を見てもこうなっているので、割と謎です。