オーディオアンプとシミュレーション

主にLTSpiceを使ったオーディオのシミュレーションについて書きます。



二段差動で限界までゲインを搾り取る

概要

 通常の二段差動回路は初段が抵抗負荷なので、初段カレントミラー負荷の構成と比べると直流ゲインで劣ります。

 初段を定電流負荷にすれば、限界までゲインを絞れます。ただし、単純に定電流負荷にしても電位が安定しないので、直流帰還が必要です。これは二段目の共通エミッタ(ソース)では同相成分だけ残っていることを利用すれば、割と容易にできます。

 発想としては、これらと同じです。

www.audio-simulation.net

www.audio-simulation.net

 ということで理屈の上ではできるので、シミュレーションでやってみます。

シミュレーション

 とりあえずこんな回路・・・。

シミュレーション回路
シミュレーション回路

 AC特性です。

AC特性
AC特性

 えぐいくらいオープンゲインが稼げています。200dBに達しそうです。

 1kHzで約1W出力時の出力FFTです。

出力FFT
出力FFT

  • 1kHz:8.8dB
  • 2kHz:-139dB
  • 3kHz:-149db

 それなりに低歪みです。

 思うところあって、初段ステップ補償にしてみます。

初段ステップ補償
初段ステップ補償

 この方がゲインが稼げるし、対称性も良くなるはずです。

AC特性
AC特性

 オープンゲインは凄まじく、10mHzで260dBくらいに達しています。実機だとここまでは出ない気がしますが、それでも相当のハイゲインになるでしょう。

 なったからなんだって話ですが。それより、対称性の改善とゲインの増大の方が重要です。

出力FFT
出力FFT

  • 1kHz:8.8dB
  • 2kHz:-142dB
  • 3kHz:-147dB

 2次歪みは微減、3次歪みは微増という結果に。これだと2段目で位相補償Cによる負帰還がかからないので、オープンゲインが増えても相殺されるのでしょう。

まとめ

 やればできます。性能についてはシミュレーションで云々してもしょうがないのですが、悪くなさそうな感触があります。ただ、この回路は見かけませんねえ。