オーディオアンプとシミュレーション

主にLTSpiceを使ったオーディオのシミュレーションについて書きます。



反転型対アース出力負性出力インピーダンスアンプ

概要

 前回の記事で「反転型だと入力インピーダンスが負にならないので、その方が良いかも」と書いたので、反転型についても利得を計算しておきます。

www.audio-simulation.net

計算

 回路はこうです。

原理図
原理図

 前回、抵抗比をいちいち入力するのが面倒くさかったので、正帰還率 \alpha、負帰還率 \beta、電流検出率 \gammaを先に定めます。また、バーチャルショートに基づいて V_i = V_{ip} = V_{im}も前提として置きます。

\begin{align}
\alpha = \frac{R_3}{R_3+R_4}\\
\beta = \frac{R_1}{R_1+R_2}\\
\gamma = \frac{R_L+R_Z}{R_L}\\
V_i = V_{ip} = V_{im}
\end{align}

 V_iV_{oo} V_oを式として定め、最初の2つを消去します。

\begin{align}
V_i &= \alpha V_{oo}\\
V_{oo} &= \gamma V_o \\
\end{align}

  V_o R_1に流れる電流から計算します。 V_{src}から引いた電位になることに注意。

\begin{align}
V_o &= V_{src} - (V_{src} - V_i)\frac{1}{\beta}\\
&= V_{src} - (V_{src} -\alpha V_{oo} )\frac{1}{\beta}\\
&= V_{src} - (V_{src} - \alpha \gamma V_o)\frac{1}{\beta}\\
V_o - \frac{\alpha \gamma}{\beta}V_o &= V_{src} - \frac{1}{\beta}V_{src}\\
V_o(1 - \frac{\alpha \gamma}{\beta}) &= V_{src}(1 - \frac{1}{\beta})
\end{align}

 式変形して利得を求めます。

\begin{align}
\frac{V_o}{V_{src}}&= \frac{1-\frac{1}{\beta}}{1-\frac{\alpha \gamma}{\beta}}\\
&= \frac{\frac{\beta}{\alpha} - \frac{1}{\alpha}}{\frac{\beta}{\alpha} - \gamma}\\
&= \frac{1}{\frac{\beta}{\alpha} - \gamma}\frac{\beta - 1}{\alpha}\\
&= -\frac{1}{\frac{\beta}{\alpha} - \gamma}\frac{1 - \beta}{\alpha}
\end{align}

 前半分は非反転型と変わりませんが、後ろ半分には \betaが寄与するようになります。

  Z_oは前半分で決まるので、以前と同じロジックで計算できます。

\begin{align}
Z_o = -R_L &= -\frac{R_Z}{\frac{\beta}{\alpha}-1}
\end{align}

シミュレーション

 簡単に検証しておきます。

シミュレーション回路
シミュレーション回路

 とりあえず \gamma=1としたとき(出力オープン)の利得を計算しておくと、

\begin{align}
\frac{V_o}{V_{src}}&= -\frac{1}{\frac{0.2}{0.1} - 1}\frac{1 - 0.2}{0.1}
&= -8
\end{align}

 となります。これを基準に、負荷が重くなればなるほど利得が増える特性です。

 出力インピーダンスは、前記事と同様 -0.1\Omegaです。負荷インピーダンス 20, 2, 0.2\Omegaの利得はそれぞれ

\begin{align}
-\frac{1}{\frac{0.2}{0.1} - \frac{20.1}{20}}\frac{1 - 0.2}{0.1}
&\simeq -8.04..\\
-\frac{1}{\frac{0.2}{0.1} - \frac{2.1}{2}}\frac{1 - 0.2}{0.1}
&\simeq -8.42..\\
-\frac{1}{\frac{0.2}{0.1} - \frac{0.3}{0.2}}\frac{1 - 0.2}{0.1}
&= -16\\
\end{align}

 といったところです。

結果
結果

 理論通り。

 なお、入力インピーダンスは R_1より小さい値になります(オペアンプの入力端子が入力と逆相で振られるため)。しかも負荷インピーダンスの関数になるので、抵抗値とドライブ回路にはそれなりに配慮する必要があります。

まとめ

 こちらも特に問題はなさそうですね。入力インピーダンスが確実に正の値になるのがメリットです。こちらの方が扱いやすいと思います。