オーディオアンプとシミュレーション

主にLTSpiceを使ったオーディオのシミュレーションについて書きます。



スーパーフィードフォワードの考察(というかメモ書き)

概略

 前回の記事に引き続いて、サンスイのスーパーフィードフォワードについて考察を深めていきます。

www.audio-simulation.net

 実際には途中経過のメモ書きなので、それほど具体的な内容はありません。

特許資料について

 コメントで頂いた資料を頼りに解析を進めていましたが、ちゃんとweb上に資料がありました。ただし、資料が掲載されているJ-PlatPatは、なんと個別の特許ページにリンクが貼れないというとんでもない仕様です。サイトの見た目はモダンな感じですが、見た目を直す前にやるべきことがたくさんあると思うんですが……。

 2018年11月時点では、

https://www.j-platpat.inpit.go.jp/

 にアクセスし、「特許・実用新案」→「1.特許・実用新案番号照会」をクリックして出てくるページで、一番上のフォームに「1979-47558」と入力して検索すると該当する特許資料が得られます。

 なお、「特開昭54-047558」というのと「特公昭56-019125」というのがあり、それぞれ内容が異なる箇所があります(それも最終的な式が違うという微妙にクリティカルな違い)。どうも「特公昭56-019125」が素で誤植をやらかしている? ような雰囲気で(その式変形はできないだろという箇所がある)、「特開昭54-047558」の方は正確でした。なんでやねん。

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定数

 さて、スーパーフィードフォワードが動作するためには A\cdot \beta \cdot gm \cdot Z=1の条件を満たす必要があります。前回の記事ではなんとなく適当な定数で条件を満たしてしまいましたが、実際にはこれはかなりきつい制約になります。

  •  A

 これに関しては割合自由に決定できる。

  •  \beta

 回路の最終的な増幅率を決めるので、変な値にはできない。また、後述する gm Zを適切な値にするためにはできるだけ大きい数字に設定したいところ、どうあがいても1以下にしかならない。

  •  gm

 これは電圧-電流変換比であり、ヘタに大きな数字にするととんでもない大電流が補正アンプから流れることになる。 gm=10[S]なら1Vの入力で10A流れちゃう訳で……。できれば gm=0.01[S]くらいにしたいのだが、後述する Zとの絡みもあり、大変。

  •  Z

 大きくすると当然出力インピーダンスに影響することでしょう。電力ロスも発生します。

 要するに、 gm Zはなるべく小さめの値にしたいのですが、そうすると \betaは事実上選択できないし、 Aを大きくしてスーパーフィードフォワード動作を実現する……以外の選択肢がありません。現実的な定数だと60dBくらいのゲインが要求されそうな雰囲気なのですが、そんなゲインで精度が出るのかとか安定に動作するのかとか・・・厄介ですね。

 スーパーフィードフォワードにおいて、補正アンプは電圧-電流変換を担います。

 特許資料には「電圧増幅器の出力に大抵抗を挿入すれば~」とものすごく嘘くさいことが書いてありますが、普通にVI変換しないとたぶんダメじゃないかなぁ・・・。

シミュレーション

 細かくは説明しませんが、こんなことをやりました。

シミュレーション回路
シミュレーション回路

 要するにC級バイアスが産む歪みをスーパーフィードフォワードで改善してみようという試みです。

FFT
FFT

 これくらいになりました。

雑感

 なんだかんだで、どんな動きになるのかはわかってきました。引き続き考察していきたいと思います。

追記

 理論について考えました。
www.audio-simulation.net