オーディオアンプとシミュレーション

主にLTSpiceを使ったオーディオのシミュレーションについて書きます。



スーパーソースフォロアのSEPPバイアス回路

はじめに

 以前スーパーソースフォロアについて記事を書きました。MOS-FETのインバーテッドダーリントンで、強力な局所帰還によって特に低周波側の特性を改善できる回路です。

www.audio-simulation.net

 ただし、この回路には素直にSEPPが作れないという問題点がありました。その解決方法を思いついたので、記事にします。

2019/02/19追記:
 この記事よりもっと良い方法があるので、そちらを御覧ください。

www.audio-simulation.net

スーパーソースフォロアSEPPの問題点

 素直に書くと下の図のようになります。

素直にSEPPにしてみたスーパーソースフォロア
素直にSEPPにしてみたスーパーソースフォロア

 このままだと上下のパワーMOS-FETのゲート電位が極めてハイインピーダンスのため不定となり、バイアス電流が確定しません。よって、この回路は動作しません。

 シングルアンプの場合は、ソースに繋がる電流源がバイアスを確定させるため、何もしなくても動作しますが、SEPPでは工夫が必要になります。

解決策

 上の回路をよく見ると、一箇所だけバイアス電源を入れられる場所が見つかります。

バイアス回路を付与したスーパーソースフォロアSEPP
バイアス回路を付与したスーパーソースフォロアSEPP

 このように上下のパワーMOS-FETのゲートを繋ぐような形でバイアスを入れます。こうすると、電源電圧からバイアス電圧を引いた電圧が両ゲートにかかり、ちゃんと動作します。

 あとはバイアス電源をどうするかですが、適当な定電圧回路にして、上下の定電流がドライバ段のアイドリング電流より大きな電流を吐き出すようにすれば問題なく動作します。

 以上を踏まえ、次のような回路でシミュレーションしてみます。

シミュレーション回路
シミュレーション回路

上下の電流
上下の電流

 対称性は微妙ですが、ちゃんとSEPP動作しています。

利点

 スーパーソースフォロアなので極めて特性は良いことが予想される。事実上無歪みに近く、高周波特性も良いので更にNFBループの中に入れることも可能。

 つまり比較的シンプルな回路で超高性能出力段になる。

欠点

 スーパーソースフォロアなので機嫌を損ねると発振などのトラブルが容易に起こり得る。

 電源の変動がもろに出力に影響すると思う。高品質な電源を使う必要がある。

 また、温度補償に苦労しそう(正の温度係数のバイアス回路を持ってこないといけない)。

 色々とトリッキーな回路なので、安全性は正直よくわからない。特に、電源投入時・電源オフ時の過渡動作でFETが飛んだりしないか不安。

応用の可能性

 ドライバ段をダイヤモンド差動などにすると電流制限がなくなり、超高速・高スルーレート出力段になる。

まとめ

 かなり玄人向けな感じはしますが、やればできると思います。