オーディオアンプとシミュレーション

主にLTSpiceを使ったオーディオのシミュレーションについて書きます。



ダーリントンの怪しい話

 まず、よくあるダーリントン型のオーディオアンプの出力段を下の図に示します。

ダーリントン型出力段
ダーリントン型出力段

 さて、この回路の上側2N3055のエミッタ電流とベース電流を見てみます。

エミッタ電流とベース電流
エミッタ電流とベース電流

 見ての通り、かなりベース電流が小さくなっています。これはダーリントンのドライバの2SC1815の動作電流と等しい訳ですから、2SC1815が特性的に厳しい領域で動作することが危惧されます。

 そこで、抵抗を挿入して電流を余計に流してやります。

抵抗を追加したダーリントン型出力段
抵抗を追加したダーリントン型出力段

 こうすると、ドライブ段に十分な電流を流してやることが出来ます。

流れる電流
流れる電流

 さて、ここで出力段がカットオフに近づき、ドライブ段出力電流*50Ωが出力段のVBEを下回ったとします。そうなると、ドライブ段だけが負荷をドライブする事態が発生しそうです。ちょっとまずそうですね。

 最大値8Vの正弦波を入力し、カットオフ付近を拡大してみてみます。

カットオフの状況
カットオフの状況

 若干そうなっているような気もします。歪みの原因に・・・なるかどうかは正直よくわかりません。

 なお、こういう手もあります。

改良された?ダーリントン
改良された?ダーリントン

 これはドライブ段エミッタから、定電流で電流を引き抜いているのとほぼ等価です。

改良された?ダーリントンの各部位の電流
改良された?ダーリントンの各部位の電流

 一緒にカットオフしているように見えます。また、ドライブ段から負荷に流れる電流がなくなるので、歪も改善するはずです。

 最大値4V(8Ω負荷で約1W)の正弦波を与え、歪のスペクトルをそれぞれで見てみます。

 このような方法で評価します。

評価方法
評価方法

 結果は、

歪のスペクトル
歪のスペクトル

 緑が0.01Ω(ほぼ直結)のとき、青が1MΩのときです。このように改善します。

 ということは、中点は繋がないほうが良い? こうすることによる副作用がなければ。