オーディオアンプとシミュレーション

主にLTSpiceを使ったオーディオのシミュレーションについて書きます。



消費電流の大きな回路の電源には大容量コンデンサが必要

概要

 タイトルの通り、「消費電流の大きな回路の電源には大容量コンデンサが必要」なのですが、知らない人も多いと思うのでシミュレーションでわかりやすく見てみます。

シミュレーション回路
シミュレーション回路

 アバウトですが、正負20Vくらいの2電源の電源です。負荷抵抗を4kΩ, 400Ω,40Ωとし、およそ10mA,100mA,1Aの負荷電流を流します。コンデンサの容量などは固定で10000uFです。

コンデンサの電流と電源電圧(正側)
コンデンサの電流と電源電圧(正側)

 緑青赤の順で負荷が重いはずです。だいぶ様子が違います。

理由

 ダイオードが導通しているごく短いタイミング以外はコンデンサが負荷に電流を供給します。そして負荷に電流が流れるということは、コンデンサにチャージされた電荷が流れ出ていくこととイコールです。当然次のサイクルで充電されるまでの間、電圧が下がります。これはリプルになります。

これから導けること

 オーディオアンプの場合、(電圧増幅段とパワー段で電源を分けるなら)電圧増幅段の電源の1000倍くらいはパワー段の電源に投資する必要がある。逆に言うと、電圧増幅段の電源はちゃちくても大丈夫。

 A級アンプを作ったらリプルが思ったより大きくてハムが出たという場合、アイドリング電流を1/4くらいにすれば一気に良くなる(ちなみに直接関係はありませんが、同じコンデンサの量でも、0.5Ωくらいの抵抗をうまく入れて二段RCローパスフィルタ風にすると、わずかな電圧降下と部品追加で顕著に効いたりするのでおすすめです)。

 商用電源のブリッジ整流なら1/100秒ないし1/120秒に1回充電される。そこにたとえば1A流れているならこれは1C/s(クーロン・パー・セック)とみなして良い訳で、充電サイクル1回の間に0.01クーロンの電荷がコンデンサから失われる。コンデンサの両端電圧にはv=q/c(q:電荷, c:コンデンサの容量)の関係があり、10000uFのコンデンサをつないでいたのならこれは0.01Fなので、およそ1VのVp-pのリプルとなる(上のシミュレーションでちゃんとそれくらいの数字になっていますね)。慣れると簡単にリプル電圧を見積もれます。

結論

 「なんとなく大きいコンデンサ入れとけば良いんだろ」で電源を組んでいる人は、一旦消費電流を勘案してみた方が良いです。